CAI02では、札幌を拠点に活躍する画家笠見康大の個展を開催する。
作家ステートメント
「私的なスケールと規定線を私的な起点で反復させたりしながら、
昨日の感覚と今日の感覚の様式を探ります。」
笠見は、意味以前のイメージ(色や形)の秩序(位置)に強い関心を持ち、描く行為の中に現れる不確定な出来事に着目しながら作品を制作している。2008年シェル美術賞、トーキョーワンダーウォール2012でトーキョーワンダーウォール賞を受賞、2015年VOCA展入選など、札幌を拠点に全国で活躍。CAI02では4年ぶりの個展となる。
筆に絵の具を付け一本の縁を引く。その線を引く勢いや速度などで一本の線は筆の毛によって幾つもの線に分かれ、垂れ、支持体によっては滲み、ぼかされる。その自らの行為と予想しない物理現象に次の線を引く衝動に駆られ、さらに線を引く。
それは前の線に重ねるのか?
並行に引くのか?
縦に引くのか?
斜めに引くのか?
色を変えるのか?
線を引く度に次の線が導き出される。
そこに思考や言語は存在しないのかも知れない。作者は純粋な媒体となり無意識からの贈り物を自動書記の様に現実世界に送り込む。描き出すストロークの痕跡は自らの身体リズムと記憶、そして超絶論的な贈り物として現れるのだ。笠見の絵画を描く根幹はそこにある。
近年、笠見は自ら描く痕跡を客体化する実験を試行している。塗る行為の神聖さは変らずとも自らが描く痕跡に限定された枠、範囲、構成、規定をはめ込み、時には限定の中に存在する自由な色の遊戯を眺め、時には暴力的に枠をはみ出し、時には抹消をもする。
ただ闇雲に線を引く行為に思考や言語は感じられないが、限定された枠内での行為には笠見の思考と言語、そして意味性を感じ取ることが出来る。そこには自己を超えた領域との応答と、物質社会で生きる人間としての自己とのギリギリのせめぎ合いの様子が伺える。おそらく笠見はその事を楽しんでいるのだろう。
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