CAI03では企画展第3弾として山田良の個展を開催する。
2020年に新たに移転したCAI03は築40年以上経つアパートビルをリノベーションしたものだ。ギャラリーはそこにあった元々の壁、天井板、押入れ、ドアなど数世帯分を解体撤去し従来の躯体構造体をあらわにした6つの空間で成り立っている。古いアパートにしては珍しいコンクリート打ち放しの躯体で構築されており、飾りっ気を全て排除した構造の美しさがあると個人的には思っている。6つの空間があることから単純に6人のグループ展など、それぞれの空間に異なるコンセプトで作品展示するには容易な場と言っていいだろう。もちろんそれもCAI03の特徴を活かす展示方法であることは間違いないが、他方、気になっていたのは躯体構造そのものの美しさを強く顕在化させることだ。それには6つの空間を差別化するのではなく、一つ空間と捉えて展開出来ないものか?そのことを昨年末のCAI03開設以来考えていた。
そこで躯体構造の美しさに対峙するには躯体構造の美しさを持って創造するのが一番興味深いと思ったのである。最初に私の頭に浮かんだアーティストが山田良。山田とは札幌国際芸術祭2014など何度か一緒に仕事をしており彼の作品に対する姿勢、テーマ、コンセプトは私なりに理解しているつもりだ。山田の創造性における根幹には正に構造体そのものの美しさを顕在化させる技と感性があり、単なるサイトスペシフィックに留まることはない。その創造性は場所に存在する力、歴史、自然、環境をも含蓄された形状、構造、造形力で観る側を圧倒させる。今回、山田の創造性がCAI03の躯体、構造を内包する芸術作品へと昇華させ、新たな居場所を築くことは間違いないであろう。
是非、ご高覧いただきたい。
CAI03アートディレクター 端聡
いまほどに「現場に居る」ことに魅了されることはなかったように思います。
目的地までの道のり、扉を開けた瞬間の香り、うっすらとただよう埃に光が当たる。そして、その場に居ながらも頭では別のことを考えてしまう、直前の出来事や今後の予定が気になってくる。目の前の出来事の美しさをなんとか感受しようとしても、瞬く間に別の思考に越境する…
『Site Preoccupation / 現場に居ることに興味がある』は、ここCAI03の空間から導き出した作品群です。室内とバルコニーを歩き回る、天井を見上げ、ひととき腰掛けることを繰り返しました。現場に居ることで浮かび上がる、想像の取り留めのなさ、視界と思考の離れと突然の絡み合いに気付きました。そしてそれらの魅力にも。
アーティスト山田良