相手の歩調に合わせるときは、膝の関節をあまり曲げないのだと気付く。
ゆっくり進むと、いつもより強くアスファルトからの熱を感じた。
− 飯島 暉子
CAI03では、8月31日(土)から9月14日(土)まで、東京を拠点に活動する飯島暉子の個展「スローダウン」を開催いたします。飯島は、8月から一ヶ月近く札幌に滞在しており、その機会を活かして本展が実現しました。
飯島暉子は、物質そのものだけでなく、空間自体に対しても、掃除や整理、配置といった極めて細やかな行為を施すことによって、その場に生じた微細な変化を行為の残滓として作品化します。
本展では、飯島が近年追求しているテーマである“仮置き”や“仮設”に焦点を当て、絶えず変化する自身の立ち位置や、日常の中で見過ごされがちな瞬間をCAI03の空間に“配置”します。彼女は自らをも移動し続ける対象として捉え、繰り返す仕草や習慣が残す痕跡を通じて、その場所の過去の記憶を読み解くことを試みます。
飯島の作品は、相手の歩調に合わせる際の微妙な身体の変化や、ゆっくりと進むことで普段気づかないアスファルトの熱さを感じ取るなど、日常の中の細やかな体験を丁寧に表現しています。そのような一瞬の気づきによって、時間の流れや場所の記憶が、作品を通して静かに浮かび上がってくるのです。
「スローダウン」は、私たちの慌ただしい生活に一時停止を促し、普段見逃してしまう瞬間の美しさを捉える空間です。飯島暉子の作品を通じて、時間と場所の関係性を新たな視点で見つめ直していただければ幸いです。
皆様のご来場を心よりお待ちしております。