CAIでは12/22より、今村育子「むこうの部屋」を開催します。
日常の些細な光景をモチーフに、空間全体をつかったインスタレーションを発表する今村育子8年ぶりの個展。部屋の奥からかすかにもれでる光の空間を遠くから眺める新作インスタレーションの他、小さなインスタレーション作品も数点展示。
32億年前 – 光合成をする生物シアノバクテリアが現れた。以来、我々の祖先は海の水面から溢れる微かな光を求めて誕生し進化し続けてきた。暗闇から光を求めることは我々生き物すべてに当てはまる生命の証なのであろう。
微かな光、微かな音、そこにある虚構の気配を長年モチーフとしてきた今村育子もまた光の中に生命を見出す。今村作品の前に我々が立つ時、否応無しに自己との対峙を強要され、それぞれの潜在意識にしまい込む望郷に触れてしまう。それは我々の中につきまとう、生命誕生から受け継がれる時空を超えた水面の「向こう側」への憧れなのかも知れない。
今回8年ぶりとなる個展「むこうの部屋」を創造した今村作品に微かな変化が生じている。長年、暗闇と光(灯り)をテーマに発表したインスタレーションでは光自体が変化し空間そのものが時間軸を伴うイリュージョンとして機能する装置と言えたが、今回の作品は一切の変化が無い。強いて言うなら光と物質で構成される絵画である。時間軸という変化が伴わない静止された空間を創造するには、作家自身が予めその空間イメージを明確に知っていることが必要不可欠である。今回、今村の中にある絵画的なインスタレーションがどのような経緯で生まれたのかは定かでは無いが、近年、母親となった今村が我が子を抱きながら、視界に入る廊下の向こうの微かな光を見つめていたという。ほのかに光る、行けない廊下を見つめながら、むこうの部屋を想像していただきたい。