CAI

ミヤギフトシ「いなくなってしまった人たちのこと」

Futoshi Miyagi “The Dreams That Have Faded”

会期 2018年1月20日(土) – 2月24日(土)
休館日 日曜・月曜・祝日
時間 13:00 – 19:00
会場 CAI03 札幌市中央区南14条西6丁目6-3
主催:CAI現代芸術研究所/CAI02
コーディネーター:佐野由美子
協力:町田恵美、SIAF Lab(船戸大輔、石田勝也)、北海道芸術学会

CAI02では新年第一弾としてミヤギフトシ展を開催します。ミヤギは自身の記憶や体験に向き合いながら、国籍や人種、アイデンティティを主題に作品を制作するアーティストです。本展「The Dreams That Have Faded/いなくなってしまった人たちのこと」は、2016年あいちトリエンナーレ”コラムプロジェクト“「交わる水-邂逅する北海道/沖縄」で発表した北海道に纏わる5つの映像インスタレーションを再構成したものです。さらに写真作品なども加わりCAI02の2つの展示室を使って展開します。北海道では、初の発表となるミヤギフトシ個展を是非、ご高覧ください。

 

『The Dreams that Have Faded/いなくなってしまった人たちのこと』は、五つの場所を舞台に、会話を通して物語が紡がれていく。異なる土地の海の映像とその潮騒の音色に耳を傾けながら、画面に映し出される字幕を追いかける。それぞれから流れる音は、いつしか協奏曲のようにまとまりを帯びて聴こえてくる。

2016年の春、北海道を訪れたミヤギはその土地を紐解く手掛かりとして津島佑子の『ジャッカ・ドフニ 海の記憶の物語』を携えていた。ジャッカ・ドフニはウィルタ語で「大切なものをおさめる家」という意を持ち、その名称の資料館がかつて北海道の網走に在った。
小説は、語り手の「わたし」がジャッカ・ドフニを訪れた北海道旅行を思い出す記憶と17世紀前半キリシタン迫害が強まる時代に生きたアイヌのルーツを持つ少女「チカップ」の物語が時空を超えて交差する。チカップを取り巻く人びともまた多様なルーツを持ち、差別や暴力の対象とされる。歴史の波にのみ込まれ消えていった声なき声を想像し、繰り返される過ちを見過ごしてはいけない。それらは現代にも続く問題でもあるのだから。

この作品がはじめて発表されたとき、聴こえてくるのはモニターから流れる音だけだった。
あらたに加わった聖歌隊がもたらすコーラスが、春の吹雪のなか海の上を飛び交う渡り鳥の鳴き声に代わり空間に響く歌となり、ふたたび物語へと誘(いざなう)う。

町田恵美(フリーランスエヂュケーター/あいちトリエンナーレ2016「交わる水」キュレーター)

ミヤギフトシ Futoshi Miyagi
1981年沖縄県生まれ。東京都在住。
留学先のニューヨークにて、美術関連書籍の専門店に勤務しながら制作活動を開始。自身の記憶や体験に向き合いながら、国籍や人種、アイデンティティといった主題について、映像、オブジェ、写真、テキストなど、多様な形態で作品を発表。2017年には小説『アメリカの風景』『暗闇を見る』(文藝2017年夏号、秋号)を発表。アーティストランスペースXYZ collectiveの共同ディレクターをつとめる。近年の主な展覧会に、「How Many Nights」(ギャラリー小柳、2017年)「Almost There」(ヴァルガス美術館、2017年)「あいちトリエンナーレ2016: 虹のキャラヴァンサライ」(愛知芸術文化センター他、2016年)「日産アートアワード ファイナリスト7名による新作展」(BankART Studio NYK、2015年)などがある。

◎関連企画
上映会&アーティストトーク
2018.1.21(Sun) 15:00-18:00
会場: 北海道大学総合博物館1階N127講演室
インタヴュアー: 町田恵美(フリーランスエヂュケーター)
コメンテーター: 菅野優香(クイア・スタディーズ、同志社大学)
企画: 浅沼敬子(北海道大学)
協力: CAI現代美術研究所、北海道芸術学会
定員30名