CAI
CAIExhibitionArt projectArt schoolArtists
CAICAI
CAIAbout usAccesscontactBlogCAICAI
CAICAI
Exhibition

高橋喜代史 個展 「1つの言葉、3つの文字」

会期  2019年7月27日(土)- 8月24日(土)
休館日  日曜・月曜・祝日
時間  13:00〜19:00
会場  CAI02 札幌市中央区大通西5 昭和ビルB2
オープニングパーティー  7月27日(土)19:00〜21:00
アーティストトーク&クロージングパーティ  8月21日(水)19:00〜21:00
トークゲスト:福地大輔(元釧路市民文化振興財団学芸員)

主催 CAI現代芸術研究所、企画キュレーター 佐野由美子

異なる複数の文化や価値観をむすびつけ、多面的な作品を制作している高橋喜代史。
CAI02では5年ぶりとなる個展「1つの言葉、3つの文字」を開催する。



「2018年における日本での難民認定申請者10,493人のうち認定者は42人に留まる。
本展はそのような日本の現状を起点に、英語・日本語・アラビア語の3つの言語をもちいた映像インスタレーション、ドローイング、小作品を展示する。
“他者を受け入れることは可能なのか?”という問いのもと、遠くの場所で起こっている出来事を自らに接続するため、難民認定申請をする人々の状況と自分を重ねる行為を街中で行います。助けを求める者に遭遇した時、我々はどのような態度をとるのか?その行為と記録から人々の関心/無関心について考察します。」

高橋喜代史(美術家)



「つかみはOK!」という台詞がある。
これは漫才、お笑いの世界で演者の発する冒頭の一言が、観客の期待感と共に集中力、
さらには大きな笑いに繋がることを暗に示す表現だ。
高橋喜代史は美術界での「つかみはOK!」を試みる稀な表現者である。
過去の代表作「ドーン」昨今の作品「poster」などを見ても判る様に、見る側は作品のビジュアルに驚き引き込まれ、作品に対して言葉を投げかけ笑いをも誘発する。札幌の公共空間で「ドーン」を展示した時には通りかかる子供の約半数、大人の1割が「ドーン」と口ずさむ。近作の「poster」シリーズも同様に奇声と笑いが起こる。正に「つかみはOK!」なのである。
美術作品である以上、一目見た瞬間の驚き、美しさ、巧みさ、圧倒感、違和感、ユーモア、感動などビジュアルの重要性は当たり前と言えばそれまでだが、高橋の場合、ユーモアという方向性で語るなら美術の世界で希少な存在だ。
さて、つかみはOK! 期待感も高まったところで、そこから続く高橋作品の真髄とは?如何なるものなのか。
昨今の「poster」シリーズとも共通する今回の個展作品では高橋本人が語る通り、現在の難民問題を起点に創造したものだ。日本では民放での紹介もあまりなく十分に知られていない問題である。現在、世界では過去最高の6850万人の難民が存在し、紛争、テロ、貧困、人権侵害、様々な理由において中東、中南米を中心に一般市民が他国へと入国を求める中、近隣国を除いて先進国の難民受け入れ数はドイツが263,622人、フランス24,007人、アメリカ20,437人(2016年調べ)と続く。日本ではここ数年1万人以上の難民申請者がある中、2017年は20人、2018年では42人となり、多少増えてはいるものの認定率は0,3%で1%にも満たない。他の先進国と比較すれば余りの低さに驚きを隠せない。この数字の低さから2017年に2万人近くまで達した日本への難民申請者数は、18年にほぼ半減している。この事実を我々日本人はほとんど知らないのである。
私はなにも高橋が政治運動家であるともポリティカルアートと説くつもりは毛頭ない。事実、この問題に真剣に取り組むNPO,NGOの存在があり、アート表現が直接、国際情勢や政治に強く影響するとは思っていないからである。
ただし美術を語る場合、それが100年前の近代作品であろうと戦後の作品であろうとも、強いてはフォルマリズムを追求した作品であっても美術というものは時代の空気をすって生まれてくるものであり、当時の時代の空気を知らないままに作品を理解することは不可能だと思っている。
それが現代の作品であればなおさらである。世界の動きに連動しながら日本の現在も動いており、その現在の空気を呼吸して我々が生きている以上、現代アートの表現に現在という時代が宿るのは至極当然であるし、現在という「今」が感じられない作品は過去の模倣としか考えられない。アーティスト個人が今に生き、何にフォーカスしているのか?作品とは、そのアーティストのフォルマリズムと平衡して、アーティストの生き様の表れそのものなのである。
高橋の場合、幼少期に時代が求める漫画のヒーロー(民衆の覚醒を促し問題解決する)への憧れと、同時に漫画に登場する「ドーン」「ガガガガ」「ギューン」等の擬音語のグラフィックに興味を持った。それら幼少期の記憶を纏った彼の代表作「ドーン」がバブル経済崩壊後、20年にわたって経済低迷が続いた2007年に登場した。おそらく高橋は時代の空気を無意識に感じ取り、疲弊した日本の濁った水面に「ドーン」という一滴の光明を投じたのであろう。その光明も虚しく翌年リーマンショックの打撃により日本は戦後最大の危機に直面することなど当時の高橋には予想もつかなったことに違いないが、誰もが口ずさむ「ドーン」の持つ革新的意味合いは何時も記憶に新しい。それは今回の個展にも繋がることであり、高橋は自分自身の感じる今を作品を通じて、見る側へあたかも共通感覚としてあったかのように想起させる仕掛けをする。今回の個展では「助けて!」の台詞を日本語、英語、アラビア語の3つの言葉で大きく作品上に表記し、街中で文字通り助けを求めるパフォーマンスを行う予定である。日本人なら否応にも「助けて!」という言葉に敏感に反応するはずだが、はたして何人が??その言葉を受けて実際に行動するかは別の話ではある・・・。
もし高橋の行為に助け舟を出す人がいた場合、当然、何らかの質問をしてくるだろう。「何を助けて欲しいのですか?」と。その質問に高橋は行為自体をアートと伝えるだろう。ただし一連の難民申請に自らを重ねたものであることを伝えるか如何かは判らない。見慣れないアラビア語が気づきのチャンスとして存在するからである。
さて実際に何人が助けに入るのであろう。または誰も助けようとしないかもしれない。いずれにしても、この行為の記録映像は面白おかしく我々の目に映るだろう。
やはり「つかみはOK!」なのだ。

CAI現代芸術研究所 ディレクター 端 聡



高橋喜代史
1974年生まれ。フランス、ニュージーランド、北アイルランドでの個展、カナダ、ドイツ、中国でのグループ展など国内外で活動。2012年より500m美術館、PARC、Think Schoolなど企画や運営を行う。2015年一般社団法人PROJECTA設立。


poster POSTER/2018/映像

signal SIGNAL/2017/映像

pagetop